『これだけは読んでおきたい素敵な絵本100』より P.141  No.087

『生きる』 谷川俊太郎 詩 岡本よしろう 絵  福音館書店 2017年 6~7歳

これほどまでに文(詩)と絵が素晴らしくマッチしている、完成度の高い作品は滅多に見られないと感じた傑作です。
谷川さんの詩「生きる」は、1971年に出版された『うつむく青年』の中に収録されている素晴らしい一編です。この詩は、半世紀前に書かれた詩とは思えないみずみずしい感性にあふれ、いまも私たちの心にせまってきます。生きていることは、「鳥ははばたき、海はとどろき、かたつむりははい、人は……? そう、人は愛するということ」と断言する素晴らしさ。「生きる」とは「いのち」ということ……とあります。「死」から始まった物語は、小学生の子どもの目からみた「生」へとしっかりシフトしていきます。

ノスタルジックな岡本さんの昭和を彷彿とさせる絵に魅入りながら谷川さんの詩を読んでいると、いつのまにか画面に登場する人物に自分をのせて、タイムスリップしているような気分になりました。この絵本と出合って、私も真剣に「生きる」こと、美しい人や物、そして美しい心に出合うことを意識して生きていきたいと強く思っています。